耳の仕組みから難聴を見る

耳の仕組みから難聴を見る

こんにちは、メガネの金剛補聴器担当大橋です。

前回は補聴器の種類や形についてお話させてもらいましたが、

今回からは聞こえについて書いていこうと思います。

そもそも音が聞こえる仕組みについてですが、

人の耳は見えている外側から

外耳、中耳、内耳

3つの部分で構成されています。

 

外耳の構造

外耳は音を集めて鼓膜に伝える働きをします。

外に見えている部分を耳介、耳の穴の部分を外耳道と言います。

外耳道は入り口から1/3が軟骨部、その奥2/3が骨部からなる全長約3cmの管になっていて、

その突き当たりに鼓膜があります。

外耳道は一方が閉鎖された管と考えることが出来るので共鳴を起こします。

共鳴について書いていくとまたややこしくなるので今回は割愛します。

 

人の外耳道の長さはおおよそ決まっていますので

3000Hz~4000Hzの周波数の音が共鳴を起こします。

つまりどうなるかと言うと、共鳴を起こした音の高さは聞こえが良くなる効果があります。

その周波数では約10dBの音圧を増強すると言われています。

 

補聴器をつけたときには補聴器の形によって外耳道共鳴が起こらなくなりますので

調整する際には外耳道共鳴分の利得を考えて調整する必要があります。

補聴器における利得とは音の増幅量と考えてください。

どれだけ音が大きくなっているのかを表しているということです。

耳に入ってきた音は外耳道を通り、まずは鼓膜に当たることになります。

 

中耳の構造

中耳は鼓膜から始まります。

鼓膜の奥は中耳腔という空洞になっていて、鼓膜に接して耳小骨があります。

耳小骨は槌(ツチ)骨・砧(キヌタ)骨・鐙(アブミ)骨の3つからなる小さな骨です。

身体の中の一番小さい骨で、アブミ骨だけ見れば約3mmともっとも小さいです。

それぞれの名前はその道具に似ていることから付けられていて

例えば鐙というのは馬に乗ったときの足をかける馬具のことです。

ちなみにツチ骨は約9mm、キヌタ骨は約7mmの大きさとのことです。

耳小骨はお互いが繋がっていて1本の橋のようになっています。

鼓膜に伝わった音の振動を効率よく内耳に伝える働きがあります。

また大きすぎる音が入ってきた場合は

そのまま内耳に伝わらないようにする安全弁の役割もしています。

 

鼓膜と耳小骨は耳に入ってきた音を内耳に伝わりやすくする為に、

鼓膜とアブミ骨との面積比約17:1に伴い約25dB、

ツチ骨とキヌタ骨のテコ比に伴い約2.5dBの音圧増強作用があると言われています。

また耳菅という中耳腔から鼻腔、咽喉に通じている管があり、

鼓膜が振動しやすいよう中耳腔と外耳道の気圧を同じように保つ働きをしています。

 

外耳から中耳は音を伝えるところにあたり、

ここに何かしらの障害が発生し、聞こえが悪くなってしまうことを伝音難聴と言います。

例えば鼓膜に穴が開いたり、耳小骨の動きが悪くなったりすると

音を伝えるところに障害が発生しているので伝音難聴になる可能性があります。

 

皆様、鼓膜が破けたら聞こえなくなる、というイメージを何となく持たれていませんか。

鼓膜はあくまで耳に入ってきた音を受け、

耳小骨を経て内耳へ音を伝達する為の器官です。

鼓膜が破けた、または穴が開いたとしても

音をまったく感じ取れなくなるわけではないので

それだけで聞こえなくなるということは考えにくいです。

伝音難聴の症状が出れば聞こえにくくはなってしまうので

小さな声や音は聞こえなくなってしまうかもしれません。

 

内耳の構造

内耳は音の振動を電気的な信号に変えて脳に伝える働きをしています。

内耳からは頭蓋骨の中にあり、その中の蝸牛(かぎゅう)という部分が聴覚に関する器官です。

その名の通りカタツムリ状の形をしており、中はリンパ液で満たされています。

外耳、中耳と伝わってきた音の振動が蝸牛の中の液に波を作ります。

この波を蝸牛の中にある有毛細胞が感じ取り、蝸牛神経を通って最終的に脳に伝わります。

 

この一連の流れで音が聞こえるわけですが、

内耳や蝸牛神経、脳に生じた障害の為に起きる難聴を感音難聴と言います。

加齢による難聴も感音難聴の一種です。

有毛細胞には内有毛細胞と外有毛細胞があり、

主に内有毛細胞がリンパ液の振動を電気信号に変える変換器の役割をしていて、

外有毛細胞は入ってきた音に反応し、音の感度を高める働きをしています。

入り口に近いところが高い音を感じ取り、奥に行くにしたがって低い音を感じ取ります。

有毛細胞は部分により担当している音の高さが決まっていて

そこが脱落してしまうと担当している音の高さの聞こえが悪くなります。

一度脱落した有毛細胞は再生しないものなので

感音難聴は補聴器による聞こえの改善が伝音難聴に比べ難しいと言えます。

 

伝音難聴の場合は補聴器により物理的に音を大きくすることで聞こえやすくなります。

しかし感音難聴の場合は語音弁別能力が低下することが多いので、

音を大きくするだけでは聞こえやすくならないことがあります。

語音弁別能力とは言葉の聞き取り能力です。

簡単に言うと少なくなってしまった有毛細胞で聞き取らないといけないので

ただ音を大きくするだけでは聞き取ることが難しくなっている状態です。

一般的に感音難聴は高音部から聞こえにくくなることが多いです。

高音部の聴力が落ちてくると会話に聞こえない成分が出てきてしまいます。

 

アイウエオの母音は主に低音部であることと、エネルギーは比較的大きいので聞こえやすいです。

子音の成分は主に高音部であることと、エネルギーが小さい為聞こえにくくなりやすいです。

例えば、「お母さん」というワードだと「okaasan」の「s」が聞こえにくくなり、

「okaaan」「おかああん」と聞こえてしまうかもしれません。

初めて補聴器をつけた方の感想で

「音は大きく聞こえるようになったけど、会話は何を言っているのかはっきりわからない」

というものがあります。

感音難聴の場合、聞こえの明瞭度を上げることが難しい場合がありますので

こういったことになる可能性があります。

 

補聴器を調整するときにはただ音を大きくするだけではなく、

聞き取りやすさをサポートする調整が必要になります。

先述したデジタル補聴器の場合はより細かな調整が出来る機種もあるので

ひとりひとりの聞こえを考慮した調整がしやすいと言えます。

 

伝音難聴+感音難聴、両方の障害を持つ難聴を混合性難聴と言います。

この場合、重度難聴聾(ろう)といったより聞こえにくい状態になることもあります。

こういった難聴の診断は耳鼻科の先生が行うものなので、

聞こえに心配がある場合は勝手な自己判断はせず、必ず耳鼻科で診てもらうようにしてください。