補聴器の効果を確認する方法とは

補聴器の効果を確認する方法とは

こんにちは、メガネの金剛補聴器担当 大橋です。

前回は補聴器の効果を最高明瞭度から考えてみました。

 

今回は補聴器の効果を実際に装用した状況で考えてみようと思います。

補聴器をつけると音が大きく聞こえるわけですが、実際にどれだけ聞こえているのか。

着けている人もわかりませんし、端から見ている我々もわかりません。

明瞭度が良ければ聞き取りもちゃんと出来ていると思われますが、

実際どうなのかはわかりません。

 

今回はまず、実際にどれだけの音で聞こえているのかを測る

音場閾値というものを見ていきます。

※閾値…その音が聞こえるか聞こえないかの境目

これにより補聴器の効果を客観的に見ていくことが出来ます。

 

上記のような記録用紙があり、こちらに記入していきます。

音場閾値を記入するときには、用紙の下半分を使います。

 

用紙の見方はオージオグラムと基本的に同じです。

横軸が周波数(右に行くほど高い音)、

縦軸が聴力レベル(下に行くほど大きい音)です。

オージオグラムの詳しい内容はこちらからどうぞ

測定は気導聴力測定などと同じく、お店では防音室にて行います。

気導聴力はヘッドホンから測定を行いましたが、

音場閾値は防音室内に設置したスピーカーから音を出して測定を行います。

 

ウォーブルトーンという震音を使い、250Hz ~ 4000Hzを測定します。

補聴器を着けていない状態と、補聴器をつけている状態、

この2つで測定を行い、結果を比較し効果を見ます。

 

言葉だけでは?だと思いますので、ひとつ例を。

測定結果はこんな風に印をつけていきます。

白抜きの△が補聴器を着けていない状態の結果、

黒で全部塗り潰してある▲が補聴器を両耳につけている状態の結果です。

図の右にも描いてありますが、それぞれ半分だけ塗った場合は

塗った側の片耳にだけ補聴器を着けた状態での結果を表しています。

今回は便宜上、着けていない状態と両方の耳に着けている状態にしています。

 

図の見方ですが、例えば1000Hz。

補聴器を着けていないときの閾値が60dB、

補聴器を着けているときの閾値が35dBということになります。

前に少し利得ということにも触れましたが、

今回の場合は1000Hzで25dBの利得を得られたということになります。

この例では補聴器を着けていない場合は60dBから聞こえ始めた音が

補聴器を着けることで35dBから聞こえ始めたことになります。

 

通常会話の音量は60dBぐらいのため、補聴器をつけていない時の会話の聞き取りは

ギリギリのラインになってしまいます。

補聴器を着けることで35dBから聞こえるようになれば、

通常会話が十分聞こえるのではないかと想像出来ます。

実際の会話に必要なのは1000Hzだけではなく、

今回はあくまで1000Hzを例に挙げた場合ですのでお間違いなく。

 

これで閾値の変化がわかったことにより、

より小さな音から聞こえるようになっていることがわかりました。

実は、補聴器の装用効果を考える上で明確に

「何dBから聞こえるようにならないといけない」といった決まりはありません。

目安として日本聴覚医学界が定める補聴器適合検査の指針の数値を参考にすると、

・1000Hzが35dB以内

・補聴器非装用時の半分が改善されている

のどちらかで良いとされています。

 

ただし、「低音域(250 ~ 500Hz)は聴力の半分でなくても良い」、

「高音域(2000~4000Hz)に関しては効果が出にくい」等のことがある為、

無理に効果を出さなくてもいいとしています。

 

軽度難聴~中等度難聴の場合の判断基準は、

1000Hzが35dBを目安に考えます。

高度難聴~中等度難聴の場合はハーフゲインといい、

こちらの図のように、聴力の半分を補えていれば良いと考えます。

この例だと裸耳閾値が80dBを超えているような聴力なので

その半分くらいまで装用閾値が出ればいいと考える方法です。

ただし、これらは目指せる場合のみ目指し、難しい場合は補える分だけを目指します。

 

大きい音が耳に入ってくるというのは、それだけでしんどい場合がありますので

補聴器を装用する人それぞれの能力に併せて調整していきます。

 

例えば補聴器を装用した際の音場閾値が35dBと出たが、うるさいと感じる場合。

音は大きく聞こえているはずですが、しんどかったり、うるさ過ぎて聞こえないかもしれません。

そういった場合は補聴器の出力を抑えて、

音場閾値が45dBくらいに調整するかもしれません。

そうすると音は小さく聞こえるようになり、

「少し分かりにくくなったが、うるさいということはなくなり補聴器を着けていられるようになった」

なんてことがあるかもしれません。

 

補聴器は、最初は着けていられることが大事なので

無理はせずに音量も徐々に上げていけばいいのです。

 

聞こえをデータ化することを客観評価と呼び、

お客様自身のどう感じるか、どう思うかを主観評価と呼んでいます。

補聴器の効果を見る客観評価と、お客様の感じる主観評価。

これらに差異が出ていないかどうか、合致しているかどうか。

そういったところから補聴器の効果が出ているかどうかを、

我々補聴器販売店は見極めていくことになります。